国民年金基金

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国民年金基金とは

国民年金基金は、国民年金(基礎年金)に上乗せして年金を受け取るための公的な年金制度で、国民年金の第1号被保険者(自営業者、フリーランス、20歳以上の学生など)を対象としています。会社員には老齢基礎年金に加えて厚生年金という「2階部分」がありますが、フリーランスエンジニアは国民年金のみのため、将来受け取れる年金額が会社員より少なくなりがちです。国民年金基金は、この「2階部分」の格差を自助努力で埋めるために国民年金法に基づいて設けられた制度です。

かつては都道府県ごとの「地域型国民年金基金」と、業種ごとの「職能型国民年金基金」(司法書士、税理士、システムエンジニアなど職種別に設立されたものを含む)が並立していましたが、2019年4月に大半の基金が統合され、現在は全国国民年金基金が運営主体となっています。フリーランスのシステムエンジニアやITエンジニアが新たに加入する場合も、基本的にはこの全国国民年金基金の窓口を通じて手続きを行います(医師や歯科医師など一部の職能型基金は統合対象外として存続しています)。

最大の特徴は、掛金の全額が社会保険料控除として所得控除の対象になり、受給が始まると生涯にわたって年金を受け取れる終身年金である点です。iDeCoと同様に掛金拠出時の節税効果がありますが、iDeCoが運用実績によって将来の受取額が変動する「確定拠出型」であるのに対し、国民年金基金は加入時点で将来の受取額(年金額)がほぼ確定する「確定給付型」という根本的な違いがあります。

仕組み・詳細解説

加入資格と運営の仕組み

加入できるのは、日本国内に住所を持つ20歳以上60歳未満の国民年金第1号被保険者と、60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入している人、および海外に居住していて国民年金に任意加入している人です。会社員や公務員(第2号被保険者)、専業主婦・主夫など第3号被保険者は加入できません。フリーランスエンジニアが法人成りして会社役員や従業員になった場合は第2号被保険者に切り替わるため国民年金基金の加入資格を喪失し、以降はiDeCoのみで積み立てを続けることになります。この加入資格の切り替わりは、独立・法人化のタイミングで見落とされやすい実務上の注意点です。

掛金の「口数制」と給付タイプ

国民年金基金の掛金は「口数」という単位で積み立てる仕組みになっています。1口目は必ず終身年金を選び、A型(15年間の保証期間付き)かB型(保証期間なし)のいずれかを選択します。2口目以降は、終身年金(A型・B型)に加えて、確定年金(I型・II型は15年保証で80歳まで受給、III型・IV型は10年保証で75歳まで受給)を自由に組み合わせて追加できます。掛金月額の上限は68,000円で、これはiDeCoの掛金と合算した金額です。1口あたりの掛金は加入時の年齢・性別・選択した型によって決まり、同じ給付水準を目指す場合、加入時の年齢が若いほど掛金は安くなる仕組みです。

給付額が決まる仕組みと予定利率

国民年金基金は確定給付型のため、加入時点で将来受け取る年金の月額がほぼ確定します。給付額の計算には基金側が見込む運用利回りである「予定利率」が使われており、この予定利率は制度創設当初は5.5%程度でしたが、その後の低金利環境を反映して段階的に引き下げられ、現在は1.5%程度の水準で給付設計されています。予定利率が下がったということは、同じ掛金でも得られる年金額が以前より少なくなっていることを意味し、「昔ほど国民年金基金はお得ではなくなった」と言われる背景にはこの予定利率の引き下げがあります。それでも掛金全額が所得控除になる効果自体は変わらないため、拠出時の節税と終身受給の安心感を重視するかどうかで評価が分かれます。

給付タイプの一覧(A型・B型・確定年金I〜IV型)

2口目以降でどの型を選ぶかによって、保証期間や受給できる年齢の範囲が変わります。おおまかな整理は次のとおりです。

年金の種類 保証期間・受給終了 加入できる口数
A型 終身年金 15年間の保証期間あり(保証期間内の死亡は遺族一時金あり) 1口目・2口目以降とも可
B型 終身年金 保証期間なし(死亡と同時に給付終了、遺族一時金なし) 1口目・2口目以降とも可
I型・II型 確定年金 15年保証、80歳まで受給(65歳または60歳支給開始) 2口目以降のみ、加入年齢に上限あり
III型・IV型 確定年金 10年保証、75歳まで受給(65歳または60歳支給開始) 2口目以降のみ、加入年齢に上限あり

確定年金(I〜IV型)は、加入時の年齢が一定以上になると選択できなくなる場合があります。若いうちに加入するほど、終身年金・確定年金のどちらも自由に組み合わせられる選択肢の幅が広い、と理解しておくとよいでしょう。

中途脱退・資格喪失時の扱い

国民年金基金は、生命保険の解約返戻金のような形での任意の中途解約はできません。ただし、就職などで第1号被保険者でなくなった場合(加入資格の喪失)は、それまで積み立てた掛金に応じて年金を受け取る権利自体はそのまま残り、老齢基礎年金の受給開始と同じタイミング以降に基金から年金として支払われます。つまり「掛け捨てになる」わけではなく、「今は掛金の拠出を止めるが、将来の受給権は残る」という状態になる点は、iDeCoの資格喪失時の扱い(新規の拠出はできなくなるが、それまでの資産の運用・受給は継続できる)と似た感覚で理解すると分かりやすいでしょう。

具体例・ユースケース

実際にどのような加入パターンが考えられるか、フリーランスエンジニアを想定したモデルケースで見てみましょう。以下は制度の仕組みを理解するための一般的な考え方の例であり、実際の掛金・給付額は加入時の年齢・性別・選択する型によって変わります。加入を検討する際は、これらのケースを参考にしつつ、自分の年齢・収入の変動幅・法人化の予定に照らして口数を組み立てるとよいでしょう。

ケース1: 35歳・独立3年目のフリーランスエンジニア

1口目を終身年金A型で加入して老後の「ベース収入」を確保し、2口目以降は確定年金(II型)を数口追加することで、公的年金の受給開始年齢である65歳前後から75〜80歳頃までの生活資金を重点的に厚くする設計です。掛金の一部はiDeCoにも振り分け、投資信託の運用益にも期待するという「安定+成長」の二本立てにするのが実務ではよく見られる組み合わせです。

ケース2: 45歳・受託開発中心で所得の波が大きいフリーランス

単発の大型案件で所得が大きく増えた年に、国民年金基金の口数を増やして掛金を引き上げ、所得控除額を増やすことで所得税・住民税の負担を平準化する使い方です。国民年金基金は掛金の増減(口数の追加・減額)が可能なため、収入が安定しない年ほど「稼げた年に多く積み立てる」調整弁として使われることがあります。ただし減額には要件があり、増口ほど自由には行えない点には注意が必要です。

ケース3: 法人成りを検討している40代エンジニア

将来的に法人化して会社役員になることを予定している場合、国民年金基金は法人成りと同時に加入資格を失うため、それ以降の掛金の拠出は終了します。それまで積み立てた分の受給権は残りますが、法人化後は厚生年金とiDeCo(企業型・個人型)が老後資金づくりの中心になります。独立当初は国民年金基金、事業拡大後は法人化してiDeCoや小規模企業共済を中心に切り替える、というライフステージに応じた使い分けが実務上のポイントです。

メリット

  • 全額社会保険料控除:年間最大81.6万円(月68,000円×12ヶ月)の掛金が所得控除の対象となり、iDeCoと並んで拠出時の節税効果が特に大きい制度です。
  • 終身年金として一生涯受給できる:1口目は必ず終身年金のため、長生きした場合でも年金が途切れる心配がありません。老後資金が想定より長く必要になる「長生きリスク」への備えとして機能します。
  • 加入時点で将来の受取額がほぼ確定する:確定給付型のため、iDeCoのように運用成績によって受取額が変動する不安がなく、老後資金の計画が立てやすい。
  • 口数の増減で掛金を柔軟に調整できる:収入が増えた年に口数を増やす、余裕がない年は増口を見送るなど、フリーランス特有の収入の波に合わせやすい。
  • A型選択時は遺族一時金がある:1口目にA型を選んだ場合、保証期間内に亡くなると遺族に一時金が支払われるため、掛け捨てへの不安を軽減できます。

デメリット

  • 途中で任意解約ができない:資格を維持している限り、自己都合での解約や解約返戻金の受け取りはできません。
  • 短命だと損をする可能性がある:保証期間のないB型は、受給開始後すぐに亡くなった場合、払い込んだ掛金総額より受取総額が少なくなることがあります。
  • 予定利率の低下で昔ほどの水準は期待できない:予定利率は制度創設時の5.5%程度から段階的に引き下げられ、現在は1.5%程度の水準です。
  • iDeCoと掛金上限を共有する:月68,000円の枠を両制度で分け合うため、どちらにどれだけ配分するかの判断が必要です。
  • 減額には制限がある:口数を増やす「増口」は比較的自由に行えますが、口数を減らす「減額」は所得の著しい減少などの要件を満たす必要があり、増口ほど柔軟ではありません。
  • 会社員化・法人役員就任で加入資格を失う:独立から法人化への移行期にこの資格喪失を見落とし、掛金の扱いを誤認してしまうケースも実務では起こり得るため注意が必要です。

iDeCoとの違い

項目 国民年金基金 iDeCo
受取方法 終身年金または確定年金 一時金または年金
運用 確定給付型(受取額が決まっている) 確定拠出型(運用次第で変動)
掛金上限 月額68,000円 月額68,000円
併用 iDeCoと合算で月額68,000円まで 国民年金基金と合算で月額68,000円まで
途中解約 原則不可(脱退時は解約返戻金なし) 原則不可(60歳まで引き出せない)

国民年金基金とiDeCoは、合算で月額68,000円(年間816,000円)が上限となります。両方を併用する場合、合計が68,000円を超えないように調整する必要があります。

実務上の判断基準としては、「安定した終身の年金」を重視するなら国民年金基金の比率を高め、「将来の増減はあっても高いリターンを狙いたい」ならiDeCoの比率を高める、という考え方が一般的です。所得税・住民税の節税効果自体はどちらの掛金も全額所得控除になる点で共通しているため、節税額だけで比較するのではなく、受取方法(確定した終身年金か、運用成果次第の一時金・年金か)の違いで配分を決めるのが実務上のポイントです。

掛金と節税効果

掛金は月額68,000円まで自由に設定でき、全額が所得控除の対象となります。年間最大で816,000円の所得控除が可能です。

年収800万円の場合の節税効果(試算例)

  • 月額6.8万円(年間81.6万円)を掛けた場合
  • 所得税率23%、住民税10%年間約26.9万円の節税

節税効果は所得水準(適用される所得税率)によって変わります。目安は次のとおりです(住民税率は一律10%として計算した参考値であり、実際の税額は各種控除の組み合わせによって変動します)。

課税所得の目安 所得税率 年間81.6万円拠出時の節税額の目安
330万円超〜695万円以下 20% 年間約24.5万円程度
695万円超〜900万円以下 23% 年間約26.9万円程度
900万円超〜1,800万円以下 33% 年間約35.1万円程度

フリーランスエンジニアは年による所得の変動が大きいため、所得が高い年ほど掛金の節税メリットが大きくなる、という点を踏まえて口数の増減を検討するのが実務上のコツです。ただし、掛金の負担自体も大きくなるため、手元に残るキャッシュフローとのバランスを見ながら判断する必要があります。

掛金は「社会保険料控除」として、確定申告書の該当欄に記載します。国民年金基金から毎年10〜11月頃に送付される「社会保険料控除証明書」を添付(e-Taxの場合は証明書情報を入力)することで控除が適用されます。国民年金保険料と同じ扱いのため、青色申告特別控除や小規模企業共済等掛金控除(iDeCo分)と合わせて、フリーランスの確定申告では毎年必ず確認しておきたい控除項目の一つです。

運用のコツ

1. iDeCoと併用してポートフォリオを分散

国民年金基金は確定給付型(受取額が確定)、iDeCo確定拠出型(運用次第で変動)です。両方を併用することで、安定した終身年金と、高利回りの資産運用の両立が可能です。

2. 若いうちに加入して長期運用

国民年金基金は、加入時の年齢が若いほど掛金が安く、受取額が多くなります。30代、40代での早期加入が有利です。

3. 終身年金を優先する

国民年金基金には「終身年金」と「確定年金」の2種類がありますが、終身年金を優先することで、長生きリスクに対応できます。

4. 控除証明書の管理を徹底する

国民年金基金は口座振替やクレジットカード払いが選べますが、いずれの場合も年末に届く社会保険料控除証明書をなくさないよう管理しておくことが重要です。証明書を紛失すると再発行の手続きに時間がかかり、確定申告の直前に慌てることになりかねません。e-Taxを使う場合は証明書の電子データを取り込める場合もあるため、早めにマイナポータル連携等を確認しておくと申告作業がスムーズになります。

5. 小規模企業共済との役割の違いを理解する

フリーランスエンジニアがよく比較する制度に小規模企業共済があります。小規模企業共済は「廃業・退職時の退職金づくり」を目的とした制度で、掛金は月額最大7万円まで全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になり、任意解約や事業資金の貸付制度も利用できます。一方、国民年金基金は「老後の年金収入」を目的とした制度で、任意解約はできない代わりに終身で受け取れる安心感があります。掛金の枠も国民年金基金・iDeCoの合算68,000円とは別枠で扱われるため、資金に余裕があれば、国民年金基金(老後の年金)+iDeCo(老後の資産運用)+小規模企業共済(廃業時の退職金)という3制度を組み合わせて設計するのが、フリーランスエンジニアの節税・資産形成における一つの完成形と言えます。

まとめ

国民年金基金は、確定給付型の終身年金として一生涯受け取れる安心感がある一方、給付設計に使われる予定利率は制度創設時より引き下げられており、昔ほど高い利回りは期待できません。iDeCoと掛金枠を分け合いながら併用することで、安定性と成長性の両立を図るのが実務上のオーソドックスな考え方です。ただし、途中で任意解約ができず、加入資格を喪失すると拠出が止まるという制約があるため、独立当初のライフプランや将来の法人化の可能性も踏まえて口数を検討することをおすすめします。

掛金の口数配分やiDeCo・小規模企業共済との組み合わせ方は、収入水準や家族構成、将来の法人化の予定などによって最適解が変わります。制度の仕組みを理解したうえで、実際の加入時には全国国民年金基金や税理士などの専門家に個別の試算を相談し、無理のない掛金設計にすることが大切です。

2025〜2026年の最新動向

2025年は年金制度改革の議論が国会・社会保障審議会で継続的に行われており、基礎年金の水準底上げや、フリーランス・自営業者の社会保障を会社員に近づける方向性が検討課題として取り上げられています。国民年金基金についても、予定利率の水準や掛金上限の在り方が中長期的な論点として意識されていますが、2026年時点で掛金上限(月68,000円、iDeCoと合算)や「1口目は終身年金必須」といった基本的な制度設計に大きな変更は生じていません。

手続き面では、マイナポータルを通じた年金記録の確認や各種届出のオンライン化が進んでおり、国民年金基金についても全国国民年金基金の公式サイトから加入手続きや掛金額のシミュレーションができるようになっています。独立直後のフリーランスエンジニアが年金設計を検討する際は、まず日本年金機構や全国国民年金基金の公式シミュレーターで、想定する掛金・受給開始年齢での受取額の目安を確認してから、iDeCoとの配分を決めるという進め方が実務的です。

よくある質問(FAQ)

Q. フリーランスエンジニアは国民年金にどう加入しますか?

A. 会社を退職してフリーランスになった場合、14日以内に市区町村役場で第1号被保険者への切り替え手続きが必要です。月額保険料は2025年度で約17,000円程度です。

Q. 国民年金だけで老後は足りますか?

A. 国民年金の満額支給は月約6.5万円程度で、それだけでは十分とは言えません。iDeCo、小規模企業共済、つみたてNISAなどを組み合わせた老後資金の準備が推奨されます。

Q. 付加年金とは何ですか?

A. 月額400円を追加で納付すると、受給時に「200円×納付月数」が年金額に上乗せされる制度です。2年で元が取れる非常にお得な制度ですが、国民年金基金に加入している場合は、掛金の中に付加年金相当分が組み込まれる形になるため、別途付加保険料に加入することはできません。

Q. 国民年金基金とiDeCo、フリーランスエンジニアはどちらを優先すべきですか?

A. 絶対的な正解はありませんが、老後の受給額を確実に確保したい場合は国民年金基金の終身年金を軸にし、運用リターンも狙いたい場合はiDeCoの比率を高めるのが一般的な考え方です。実務では、まず1口目(終身年金)で国民年金基金に加入し、残りの掛金枠をiDeCoに回すという併用パターンもよく見られます。

Q. 国民年金基金の掛金は途中で減らせますか?

A. 口数を増やす「増口」は比較的自由に行えますが、口数を減らす「減額」は所得の著しい減少など一定の要件を満たす場合に限られ、増口ほど自由には行えません。収入変動が大きい場合は、最初から無理のない口数で加入し、余裕があるときに増口する方が現実的です。

Q. 法人成りしたら国民年金基金の掛金はどうなりますか?

A. 法人の役員や従業員になり厚生年金の被保険者(第2号被保険者)になると、国民年金基金の加入資格を失い、それ以降の掛金拠出はできなくなります。ただし、それまで積み立てた分の受給権はなくならず、老後に年金として受け取れます。

Q. 国民年金基金と厚生年金は何が違いますか?

A. 厚生年金は会社員・公務員(第2号被保険者)が加入する制度で、給与に応じて保険料が労使折半で決まり、老齢基礎年金に上乗せされる形で受給します。国民年金基金はフリーランスなど第1号被保険者向けの制度で、保険料の会社負担はなく、掛金や口数を自分で選んで任意に設計する点が大きく異なります。会社員の厚生年金に相当する「2階部分」を自分で用意する仕組みが国民年金基金、と捉えると理解しやすいでしょう。

Q. 掛金の支払い方法にはどのようなものがありますか?

A. 口座振替が基本ですが、クレジットカード払いに対応している場合もあります。支払い方法や口数の変更手続きは全国国民年金基金の窓口やウェブサイトから行えるため、収入状況が変わったタイミングで見直しを検討するとよいでしょう。

関連用語

iDeCo 小規模企業共済 確定申告 青色申告

外部リンク・参考資料

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