SOAR

セキュリティ運用・監視 | IT用語集

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SOARとは

SOAR(Security Orchestration, Automation and Response)は、セキュリティ運用の効率化と自動化を実現するプラットフォームです。多様なセキュリティツールの統合、プロセスの自動化、インシデント対応の迅速化を支援し、セキュリティオペレーションセンター(SOC)の運用効率を大幅に向上させます。

SOARは、セキュリティアラートの大量発生により疲弊するセキュリティチームの課題を解決するために生まれた概念です。手動での対応では限界があるセキュリティインシデントに対して、自動化されたワークフローとプレイブックを活用することで、一貫性のある効率的な対応を実現します。

SOARの3つの要素

1. オーケストレーション(Orchestration)

異なるセキュリティツールやシステムを統合し、相互連携を可能にします。SIEM、EDR、ファイアウォール、脆弱性スキャナーなど、多様なツールからのデータを一元的に管理し、統一的なビューを提供します。

2. オートメーション(Automation)

定型的なセキュリティタスクを自動化し、人的リソースをより重要な業務に集中させます。アラートのトリアージ、エンリッチメント、初期対応などの繰り返し作業を自動実行します。

3. レスポンス(Response)

インシデント発生時の対応手順を標準化し、迅速で一貫性のある対応を実現します。プレイブックに基づいた自動対応や、アナリストへの適切なエスカレーションを行います。

SOARの主要機能

  • プレイブック管理:インシデント対応手順の標準化と自動実行
  • ケース管理:インシデントの追跡と管理の一元化
  • レポーティング:セキュリティ運用のメトリクスと分析
  • 脅威インテリジェンス統合:外部脅威情報の活用
  • コラボレーション:チーム間の情報共有と連携
  • API統合:既存ツールとの柔軟な連携

SOAR導入のメリット

  • 対応時間の短縮:自動化により平均対応時間を70-90%削減
  • 人的エラーの削減:標準化されたプロセスによる品質向上
  • アナリストの負荷軽減:定型作業の自動化による高度業務への集中
  • 可視性の向上:統合ダッシュボードによる全体把握
  • コンプライアンス強化:監査証跡と標準化された対応手順
  • スケーラビリティ:増大するアラートに柔軟に対応

プレイブックの例

// フィッシングメール対応プレイブック
1. アラート受信
   ↓
2. 送信者情報の自動検証
   ↓
3. 類似メールの検索
   ↓
4. 影響範囲の特定
   ↓
5. メール隔離の実行
   ↓
6. ユーザーへの通知
   ↓
7. レポート生成

// マルウェア検出対応プレイブック
1. EDRアラート受信
   ↓
2. ハッシュ値の脅威インテリジェンス照会
   ↓
3. 感染端末の隔離
   ↓
4. プロセス詳細の調査
   ↓
5. 横断的感染の確認
   ↓
6. 除去処理の実行
   ↓
7. インシデントレポート作成

主要SOARベンダー比較

ベンダー 製品名 特徴 価格帯
Splunk Phantom 豊富なプレイブック、強力な統合 高価格
IBM Resilient AI活用、エンタープライズ向け 高価格
Demisto XSOAR 機械学習、使いやすいUI 中価格
Rapid7 InsightConnect シンプル、中小企業向け 中価格
Siemplify Security Operations ビジュアルプレイブック 中価格
LogRhythm RespondX SIEM統合、コスト効率 低価格

SOAR導入ステップ

フェーズ1:現状分析(1-2ヶ月)

  • 既存セキュリティツールの棚卸し
  • インシデント対応プロセスの文書化
  • 自動化候補タスクの特定
  • ROI目標の設定

フェーズ2:ベンダー選定(1-3ヶ月)

  • 要件定義書の作成
  • POC(概念実証)の実施
  • 統合性評価
  • コスト分析

フェーズ3:導入・構築(3-6ヶ月)

  • 基盤システムの構築
  • 既存ツールとの統合
  • 初期プレイブックの開発
  • ユーザートレーニング

フェーズ4:運用・改善(継続)

  • プレイブックの継続改善
  • 新規ユースケースの追加
  • 効果測定とKPI管理
  • チューニングと最適化

導入時の課題と対策

技術的課題

  • 複雑な統合:APIの不統一や古いシステムとの連携困難
  • パフォーマンス:大量データ処理時のレスポンス低下
  • カスタマイズ:組織固有の要件への対応

組織的課題

  • スキル不足:プレイブック開発やシステム運用スキル
  • 変更管理:従来プロセスからの移行抵抗
  • 投資対効果:短期的なROI証明の困難

SOARの将来展望

SOARプラットフォームは、AI・機械学習技術の統合により更なる進化を遂げています。自動的な脅威分析、プレイブックの最適化提案、インシデントの重要度自動判定など、より高度な自動化が実現されています。

また、クラウドネイティブアーキテクチャの採用により、スケーラビリティと運用コストの最適化が進んでいます。SaaS型SOARサービスの普及により、中小企業でも高度なセキュリティ自動化が導入しやすくなっています。

成功事例

大手金融機関の事例

月間50万件のセキュリティアラートを処理していた大手銀行では、SOAR導入により90%のアラートを自動処理。平均対応時間を4時間から15分に短縮し、アナリストの負荷を大幅に軽減しました。

製造業での活用事例

グローバル製造企業では、複数拠点のセキュリティ運用を統一化。標準化されたプレイブックにより、地域間での対応品質のばらつきを解消し、インシデント対応の成熟度を向上させました。

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