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概要
.NET(ドットネット)は、マイクロソフト社が開発・提供する統合開発プラットフォームおよびランタイム環境です。2000年の初版リリース以来、企業システム開発の中核技術として発展し、現在では.NET 6以降でクロスプラットフォーム対応(Windows、macOS、Linux)を実現しています。C#、VB.NET、F#など複数のプログラミング言語をサポートし、ASP.NET、WPF、WinForms、Xamarinなど多様なアプリケーション開発フレームワークを包含する包括的なエコシステムを提供します。高いパフォーマンス、強力な型システム、豊富な標準ライブラリ、Visual Studioとの緊密な統合により、エンタープライズ開発において高い信頼性と生産性を実現しています。
特徴
- クロスプラットフォーム対応:Windows、macOS、Linuxでの統一的な開発・実行環境
- 多言語サポート:C#、VB.NET、F#など複数言語の統合開発
- 強力な型システム:コンパイル時の型安全性とIntelliSense支援
- 高パフォーマンス:JITコンパイルとAOTコンパイルによる最適化
- 豊富なフレームワーク:Web、デスクトップ、モバイル、クラウド対応
- NuGetエコシステム:膨大なサードパーティライブラリの活用
- Enterprise Ready:大規模システム開発に必要な機能を標準装備
アーキテクチャ
.NETは以下の階層化されたアーキテクチャで構成されています:
- .NET Runtime (CLR):共通言語ランタイムとガベージコレクション
- Base Class Library (BCL):基本的なデータ型とシステム機能
- ASP.NET Core:高性能Webアプリケーションフレームワーク
- Entity Framework Core:オブジェクトリレーショナルマッピング
- Dependency Injection:標準組み込みのDIコンテナ
- Configuration System:柔軟で拡張可能な設定管理
- Middleware Pipeline:リクエスト処理の効率的なパイプライン
主な用途
- エンタープライズWebアプリ:大規模業務システム・ERP・CRM
- Web API・マイクロサービス:RESTful APIとgRPCサービス
- デスクトップアプリケーション:WPF・WinUI・MAUI
- 金融・保険システム:高信頼性が求められる基幹システム
- クラウドネイティブアプリ:Azure・AWS・GCPでのマイクロサービス
- 業務自動化ツール:ワークフロー・バッチ処理システム
- データ分析プラットフォーム:ML.NET機械学習アプリケーション
パフォーマンス
.NETの優秀なパフォーマンス特性:
- Just-In-Time (JIT) コンパイル:実行時最適化による高速処理
- Ahead-of-Time (AOT) コンパイル:ネイティブバイナリ生成で超高速起動
- ガベージコレクション:世代別GCによる効率的なメモリ管理
- 非同期プログラミング:async/awaitによる高スループット実現
- SIMD最適化:ベクトル演算による数値計算の高速化
- Span<T>とMemory<T>:ゼロアロケーション高性能プログラミング
- マルチスレッド最適化:Task Parallel LibraryとPLINQ
エコシステム
.NETの包括的なエコシステム:
- Visual Studio:世界最高峰の統合開発環境
- Azure DevOps:CI/CD・プロジェクト管理・テスト自動化
- Entity Framework Core:現代的なORM・データアクセス技術
- SignalR:リアルタイム通信ライブラリ
- Blazor:C#によるWebフロントエンド開発
- ML.NET:機械学習・データサイエンスフレームワーク
- MAUI:クロスプラットフォームアプリ開発
- Orleans:アクターモデル分散システムフレームワーク
💡 .NET選択のポイント
.NETは特にエンタープライズ環境において優秀な選択肢で、長期保守性、開発者確保の容易さ、マイクロソフトエコシステムとの統合性が大きなメリットです。強力な型システムと豊富なツールサポートにより、大規模チーム開発や複雑なビジネスロジックの実装に適しています。ただし、ライセンス費用(商用利用時)や学習コストを考慮する必要があります。近年のオープンソース化とクロスプラットフォーム対応により、選択肢としてさらに魅力的になっています。