5g

IoT・エッジ | IT用語集

5Gとは

5G(Fifth Generation、第5世代移動通信システム)は、国際電気通信連合の無線通信部門であるITU-Rが「IMT-2020」として要件を定義した移動通信規格です。最大20Gbps級の高速通信(eMBB)・1ms以下を目指す超低遅延(URLLC)・1km²あたり100万台規模の多数同時接続(mMTC)という3つの利用シナリオを1つの無線技術でカバーする点が、単なる「4Gの高速版」ではない5Gの本質です。標準化は3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)という携帯電話事業者・メーカーが参加する国際標準化団体が担っており、2018年頃に策定されたRelease 15で最初の5G仕様(既存4Gコアに乗り入れるNSA方式)が固まり、2020年頃のRelease 16でコアネットワークも5G単独のSA方式が本格的に規定されました。

日本では2019年4月に総務省がNTTドコモ・KDDI(au)・ソフトバンク・楽天モバイルの携帯電話事業者4社に5G向け周波数を割り当て、2020年3月から順次商用サービスが開始されました。割当周波数は主に「Sub6帯」と呼ばれる6GHz未満の3.7GHz帯・4.5GHz帯と、「ミリ波帯」と呼ばれる28GHz帯の2系統です。Sub6帯は従来の4Gに近い電波の飛びやすさを保ちながら帯域幅を広げて高速化するのに対し、ミリ波帯はさらに広い帯域幅を確保できる代わりに直進性が強く障害物に弱いという、性質の異なる周波数帯を組み合わせて使う点が5Gネットワーク設計の大きな特徴です。

用語としての「5G」は、キャリアが提供する公衆網(パブリック5G)だけでなく、企業や自治体が自社エリア向けに免許を取得して構築する「ローカル5G(プライベート5G)」も含みます。IoTの文脈では、多数のセンサー・カメラ・ロボットを低遅延かつ大量に接続できる通信基盤として、工場・港湾・建設現場・医療現場などでの活用が広がっています。

5Gの3大特長

  • 超高速・大容量(eMBB: enhanced Mobile Broadband):理論上の最大値は20Gbps程度とされますが、実際の利用環境での実効速度は4〜10Gbps程度、混雑した都市部ではさらに下がることもあります。8K動画配信・AR/VR・大容量ファイルの高速アップロードなどに向いています。
  • 超低遅延(URLLC: Ultra-Reliable and Low Latency Communications):無線区間の理論値として1ms以下という目標が掲げられていますが、実際に体感できる遅延はコア網の構成(後述のSA化)やエッジ処理の有無に左右されます。自動運転の遠隔制御、工場ロボットのリアルタイム制御、遠隔医療のような「反応の速さ」が安全性に直結する用途を想定しています。
  • 多数同時接続(mMTC: massive Machine Type Communications):1km²あたり100万台程度のデバイス接続を目標とするシナリオです。街中のセンサー・スマートメーター・農地の環境センサーなど、1台あたりの通信量は少ないが台数が膨大なIoT用途を支えます。

重要なのは、この3つの特長を1つの基地局が常にすべて同時に最大性能で提供できるわけではないという点です。実際のネットワーク設計では、後述の「ネットワークスライシング」によって用途ごとに優先度・帯域を割り当てたり、周波数帯(Sub6/ミリ波)やSA/NSAといった構成を組み合わせて、要件に応じた性能を作り込みます。

仕組み・技術詳細

周波数帯とMassive MIMO

日本の5Gは主に「Sub6帯」(3.7GHz帯・4.5GHz帯)と「ミリ波帯」(28GHz帯)の2つの周波数帯を使い分けます。Sub6帯は4G LTEで使われてきた周波数に近く、電波の直進性がそこまで強くないため広いエリアをカバーしやすい一方、ミリ波帯は波長が短く直進性が強いため、コンクリート壁やガラス1枚でも電波が大きく減衰しやすく、屋内へは基本的に届きにくいという性質があります。この弱点を補うため、5Gの基地局アンテナには多数のアンテナ素子を束ねて特定方向に電波を集中させる「Massive MIMO(大規模MIMO)」というビームフォーミング技術が広く採用され、少ない送信電力でも狙った方向の端末へ効率よく電波を届けています。

スモールセルによるエリア設計

ミリ波帯の直進性の強さ・障害物への弱さを補うため、5Gのエリア設計では従来の4Gマクロ基地局(広範囲をカバーする大出力の基地局)に加えて、電柱や建物の壁面などに小型・低出力の基地局を密に配置する「スモールセル」という考え方が重要になります。屋内では基地局からのアンテナ配線を天井裏などに分散配置する「DAS(分散アンテナシステム)」と組み合わせることで、ミリ波が届きにくい奥まった部屋や地下でも実用的な速度を確保する設計が採られます。スタジアムや駅のように短時間に多数の端末が集中する場所ほど、スモールセルの高密度配置が効いてきます。

ネットワーク構成:NSAとSA

5Gのネットワーク構成には大きく分けて「NSA(Non-Standalone)」と「SA(Standalone)」の2方式があります。NSAは5Gの無線部分(基地局)だけを新設し、コアネットワーク(呼制御やデータ転送を司る中枢部分)は既存の4G LTEコアを流用する方式で、初期の5Gサービスの多くはこの方式で立ち上がりました。一方SAは無線・コアの両方を5G専用に構築する方式で、SA化して初めて超低遅延の実力やネットワークスライシングといった5G本来の機能をフルに引き出せるとされています。日本の主要キャリアも2020年代前半からSA方式のサービスを順次拡大しています。

ネットワークスライシング

ネットワークスライシングとは、1つの物理的な5G基地局・回線設備の上に、用途別に独立した仮想ネットワーク(スライス)を複数構築する技術です。例えば「工場の制御用スライスには低遅延・高信頼性を最優先で割り当てる」「監視カメラ映像用スライスには帯域を優先的に割り当てる」といった具合に、SLA(サービス品質保証)を用途ごとに個別設定できます。5G SA環境で本格的に活用でき、企業向けの品質保証されたIoT回線の提供にもつながっています。

MEC(マルチアクセス・エッジコンピューティング)

5Gの超低遅延を実務で活かすうえで欠かせないのがMEC(Multi-access Edge Computing)です。データ処理をクラウドの中央サーバーまで送らず、基地局や通信キャリアの拠点に近い場所にサーバーを配置して処理を完結させることで、往復の伝送遅延を大幅に削減します。5Gの無線区間だけが速くても、処理をクラウドの遠い場所まで往復させていては全体の遅延は縮まらないため、MECは5G活用の「片翼」として工場・スタジアム・自動運転の実証実験などで導入が進んでいます。

具体例・ユースケース

5Gは民生向けのスマートフォン通信だけでなく、産業・公共分野でも導入が進んでいます。代表的な活用シーンは次のとおりです。

  • スマートファクトリー:ローカル5Gを工場内に構築し、AGV(無人搬送車)や産業ロボットの制御、高精細カメラによる外観検査データの伝送に活用。有線配線が難しいレイアウト変更の多いラインで特に有効です。
  • 建設・重機の遠隔操作:危険な現場での重機を、離れた操作室から低遅延の映像フィードバックを見ながら遠隔操縦する実証・実用化が進んでいます。
  • 自動運転・コネクテッドカー:車両同士や信号機とのV2X(Vehicle-to-Everything)通信、周辺の交通情報のリアルタイム共有に5Gの低遅延性が活用されます。
  • スタジアム・エンタメ:数万人規模の観客が同じ会場で同時にスマートフォンを使う環境でも安定した通信を提供するmMTC特性を活かした事例です。
  • 遠隔医療・スマート医療:高精細な医療画像のリアルタイム転送や、遠隔での診療支援に低遅延・大容量通信が活用されています(実際の遠隔手術は法制度・安全性の観点から慎重な検証が前提です)。
  • 固定無線アクセス(FWA):光回線の敷設が難しい地域や仮設拠点向けに、5G回線をホームルーター経由で固定回線代わりに使うサービスも広がっています。
  • 港湾・物流:コンテナヤードでのクレーン遠隔操作や資材のトラッキングに、広いエリアをカバーできるローカル5Gが採用される事例があります。

これらの用途に共通するのは、「有線ケーブルの敷設が困難」「対象が移動する」「多数の端末・センサーを同時に扱う」という、Wi-Fiや有線LANでは対応しづらい制約を5G・ローカル5Gが解決している点です。逆に言えば、固定設置された少数の端末を接続するだけであれば、Wi-Fiや有線LANのほうがコスト・保守の面で有利な場合も多く、用途に応じた比較検討が欠かせません。

メリット・デメリット

メリット

  • 高速・低遅延・多数接続という異なる要件を、ネットワークスライシングにより1つのインフラ上で使い分けられる
  • ローカル5Gにより企業が自社エリア専用のネットワークを構築でき、公衆網の混雑や電波干渉の影響を受けにくい
  • MECとの組み合わせで、クラウド中央集権型では実現しづらいリアルタイム制御・映像解析が可能になる
  • 4Gエリアを流用できるNSA方式により、初期投資を抑えつつ段階的にエリアを拡大できる

デメリット・注意点

  • ミリ波帯は直進性が強く障害物に弱いため、屋内や遮蔽物の多い環境では期待した速度が出ないことがある
  • 広いエリアを高密度でカバーするには基地局・スモールセルの数を増やす必要があり、キャリア・企業双方にとってインフラ投資の負担が大きい
  • SA化しないと真の低遅延やネットワークスライシングの恩恵を十分に得られず、NSA方式のままではURLLC本来の性能が発揮されない場合がある
  • 5G対応チップセット・端末はLTE専用機種に比べてコストが高くなりやすく、IoT機器への組み込みでは後述のRedCapのような簡易規格の検討が必要になることがある
  • ローカル5Gの導入には免許申請・電波干渉調整・基地局設計など専門知識を要する手続きが伴う

混同されやすい用語・類似技術との違い

5Gと4G(LTE)の違い

4G(LTE)は最大1Gbps程度の速度を目標に設計された規格で、遅延は数十ms程度が一般的です。5GはeMBBで最大20Gbps程度、URLLCで1ms以下を目指す点で世代として大きな飛躍がありますが、実際の体感差は利用環境(周波数帯・基地局密度・端末性能)によって変わります。またLTEはeMBB相当の高速化を主目的とした規格である一方、5Gは高速化に加えて低遅延・多数接続という異なる3シナリオを最初から想定して設計されている点が本質的な違いです。

5Gとローカル5G(プライベート5G)の違い

一般に「5G」と呼ばれるのはNTTドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルなどキャリアが提供する公衆網です。これに対し「ローカル5G」は企業や自治体が総務省から自ら無線局免許を取得し、工場・オフィス・自治体施設など特定エリア内に構築する自営の5Gネットワークです。日本では2019年12月に制度が創設され、2020年以降に商用の導入事例が拡大しています。公衆網に依存しないため通信の優先制御や独自のセキュリティポリシーを適用しやすい一方、免許取得・基地局設計・保守運用を自社または委託先で担う必要があります。

5GとWi-Fi 6/6Eの違い

Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)は免許不要の周波数帯(2.4GHz・5GHz、6EはさらにGHz帯を拡張)を使う無線LAN規格で、機器の導入コストが低く屋内での高速通信に強みがあります。一方5Gはキャリアやローカル5Gの免許に基づく通信で、広いエリアをカバーしながら移動中の端末へも安定した通信を提供でき、ハンドオーバー(基地局間の切り替え)を前提とした設計になっている点がWi-Fiとの大きな違いです。工場内など固定的なエリアではWi-Fi 6、広域移動や高信頼性が必要な用途ではローカル5G、という使い分けが一般的な考え方です。

項目4G(LTE)5G(Sub6)5G(ミリ波)Wi-Fi 6ローカル5G
周波数帯700MHz〜3.5GHz帯等3.7GHz帯・4.5GHz帯28GHz帯2.4GHz・5GHz帯(免許不要)4.6〜4.9GHz帯・28GHz帯の一部等
最大速度の目安1Gbps程度数Gbps程度20Gbps程度(理論値)9.6Gbps程度(理論値)用途・帯域による
遅延の目安数十ms程度数ms〜10ms程度1ms以下を目指す(SA構成時)数ms〜10ms程度構成次第でURLLC相当も可能
エリア特性広域カバー広域〜中距離直進性が強く狭域・見通し重視屋内中心の狭域自社エリア限定
免許キャリア免許キャリア免許キャリア免許免許不要自営免許(要申請)

数値はいずれも代表的な仕様上の目安であり、実際の速度・遅延は基地局からの距離、障害物、混雑状況、SA/NSAの別など多くの条件によって変動します。

導入・実務ポイント

5Gを実際のシステムに組み込む際は、「とにかく5Gを使う」ことが目的化しないよう注意が必要です。既存のWi-Fiや有線LANで要件を満たせるならそちらのほうが導入・保守コストを抑えられるケースも多く、5G・ローカル5Gは「広いエリアを移動しながら」「有線配線が困難」「高信頼性のSLAが必要」といった、5Gならではの強みが活きる場面で選定するのが実務上の基本方針です。導入検討時に押さえておきたい観点は次のとおりです。

  • 要件をeMBB/URLLC/mMTCのどれに寄せるか明確にする:高精細映像伝送が主目的ならeMBB重視、リアルタイム制御ならURLLC重視というように、用途に応じて周波数帯・SA化の優先度・ネットワークスライシング設計が変わる
  • ローカル5G導入は免許申請リードタイムを見込む:総務省への無線局免許申請、既存無線システムとの干渉調整など、公衆網利用に比べて準備期間が必要になる
  • 屋内エリア化はミリ波の弱点を前提に設計する:ミリ波は壁1枚で大きく減衰するため、屋内はSub6帯や別途のスモールセル・DAS(分散アンテナシステム)でカバーする設計が現実的
  • IoT機器はフル仕様の5Gが必要か見極める:センサーなど低頻度・小容量の通信にはコストと消費電力を抑えたRedCap(後述)やLTE-M/NB-IoTのほうが適する場合がある
  • SA化のロードマップを確認する:NSA止まりのエリアではURLLCやネットワークスライシングの本来の性能が出ないため、対象エリアの5G SA対応状況をキャリアに確認しておく

2025〜2026年の最新動向

  • 5G SA(スタンドアローン)の展開拡大:主要キャリアがSA対応エリアを順次拡大しており、ネットワークスライシングを活用した企業向けサービスの提供事例が増えています。
  • 5G RedCap(Reduced Capability)の実用化:3GPP Release 17で標準化されたRedCapは、ウェアラブルや産業用センサーなど「フル仕様の5Gほどの速度は不要だがLTE-M/NB-IoTでは物足りない」中間層のIoT機器向けに、モデムの複雑さ・消費電力・コストを抑えた仕様です。
  • ローカル5Gの導入事例の広がり:工場・港湾・建設現場に加え、農業やスタジアム・イベント会場など活用領域が広がり、構築・保守を支援するSIer各社のパッケージ化も進んでいます。
  • 6G(IMT-2030)の標準化準備:ITU-Rは2023年に次世代規格の枠組み「IMT-2030」に関する勧告をまとめ、2030年頃の商用化を目指した研究・標準化活動が国内外で進行中です。5Gで培われたネットワークスライシングやMECの考え方は6Gでも土台になるとみられています。
  • AIとネットワーク運用の融合:基地局の電力制御やトラフィック予測にAIを活用し、省電力化・自動最適化を図る「AI-RAN」的な取り組みが通信業界で議論・実証されています。

よくある質問(FAQ)

Q. 5Gとは何ですか?

5G(第5世代移動通信システム)は、ITU-Rが定めたIMT-2020の要件に基づく移動通信規格です。最大20Gbps程度の高速通信(eMBB)・1ms以下を目指す超低遅延(URLLC)・1km²あたり100万台規模の多数接続(mMTC)という3つの特長を持ち、標準化は3GPPという国際団体が担っています。

Q. 5GとLTE(4G)の違いは何ですか?

LTEの最大速度は1Gbps程度、遅延は数十ms程度が一般的です。5GはeMBBで最大20Gbps程度、URLLCで1ms以下を目指すなど大きく高速化・低遅延化しますが、実際の性能はSA化の有無や利用環境に左右されます。またLTEが高速化中心の規格であるのに対し、5Gは低遅延・多数接続も含めた3つのシナリオを最初から想定している点が世代としての違いです。

Q. ローカル5G(プライベート5G)とは何ですか?

ローカル5Gは、企業や自治体が総務省から自ら無線局免許を取得し、工場・港湾・自治体施設など特定エリア内に構築する自営の5Gネットワークです。日本では2019年12月に制度が創設され、以降スマートファクトリーや建設現場などでの導入事例が広がっています。

Q. NSAとSAの違いは何ですか?

NSA(Non-Standalone)は5Gの基地局のみを新設し、コアネットワークは既存の4G LTEを流用する構成です。SA(Standalone)は無線・コアの両方を5G専用に構築する構成で、SA化して初めてネットワークスライシングや本来の超低遅延性能が発揮できるとされています。

Q. 5G RedCapとは何ですか?

RedCap(Reduced Capability)は3GPP Release 17で標準化された、IoT機器向けに機能を絞り込んだ5G仕様です。フル仕様の5Gほどの速度は不要だがLTE-M/NB-IoTでは力不足、というウェアラブルや産業用センサーなどの中間層の用途に向けて、モデムの複雑さ・消費電力・コストを抑えています。

Q. 5GとWi-Fi 6はどちらを選べばよいですか?

屋内の固定的なエリアで導入コストを抑えたい場合はWi-Fi 6、広いエリアや移動中の端末も含めて安定した通信・独自のセキュリティポリシーが必要な場合はローカル5Gが向いています。実務では屋内はWi-Fi 6、屋外や広域はローカル5Gという組み合わせ設計も一般的です。

関連用語

  • IoT(Internet of Things):5Gなどの通信インフラが支えるモノのインターネット全体の基礎知識
  • IIoT(産業用IoT):スマートファクトリーでのローカル5G活用と重なる産業分野のIoT
  • エッジコンピューティング:MECの土台となる、データ発生源の近くで処理を行う考え方
  • MQTT:5G経由で収集したセンサーデータをクラウドへ送る軽量通信プロトコル
  • Wi-Fi:屋内での無線通信という点で5G・ローカル5Gとしばしば比較される規格
  • センサー:mMTCで多数接続される代表的なIoTデバイス

外部リンク・参考資料

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