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Kubernetes Securityとは
Kubernetes Security(Kubernetesセキュリティ)とは、Kubernetesクラスターの包括的なセキュリティ設定と運用を行うセキュリティ分野です。コンテナオーケストレーションプラットフォームであるKubernetesにおいて、クラスター全体、ワークロード、ネットワーク、データの安全性を確保するための多層的なセキュリティ対策を指します。
Kubernetesセキュリティの4つの主要領域
1. クラスターセキュリティ
API Serverセキュリティ
- TLS暗号化:すべてのAPI通信の暗号化
- 認証機能:ユーザーとServiceAccountの認証
- RBAC(Role-Based Access Control):ロールベースのアクセス制御
- Admission Controllers:リソース作成時の検証とポリシー適用
etcdセキュリティ
- etcd暗号化:クラスター情報の保存時暗号化
- アクセス制限:etcdへの直接アクセス制限
- バックアップ暗号化:etcdバックアップの暗号化
ノードセキュリティ
- OS強化:ノードOSのセキュリティ設定
- Kubeletセキュリティ:Node AgentのTLS設定
- ランタイムセキュリティ:コンテナランタイムの保護
2. ワークロードセキュリティ
Pod Security Standards
Kubernetesの標準セキュリティポリシー:
- Privileged:制限なし(非推奨)
- Baseline:基本的なセキュリティ制限
- Restricted:厳格なセキュリティ制限
Security Context
- runAsNonRoot:非rootユーザーでの実行
- readOnlyRootFilesystem:読み取り専用ルートファイルシステム
- allowPrivilegeEscalation:特権昇格の制御
- capabilities:Linux capabilitiesの制御
- seccompProfile:システムコール制限
- seLinuxOptions:SELinuxラベル設定
3. ネットワークセキュリティ
Network Policies
- Ingress Rules:Pod への受信トラフィック制御
- Egress Rules:Pod からの送信トラフィック制御
- Namespace分離:論理的なネットワーク分離
- ラベルセレクター:細かなトラフィック制御
Service Mesh
- mTLS(mutual TLS):サービス間通信の相互認証
- 暗号化:Pod間通信の暗号化
- 認証・認可:サービスレベルの認証制御
- 監査ログ:通信の詳細ログ記録
4. データ保護
Secret管理
- Secret暗号化:etcd内のSecret暗号化
- 外部Secret管理:HashiCorp Vault、AWS Secrets Managerとの統合
- Secret ローテーション:定期的な秘密情報の更新
- 最小権限アクセス:必要最小限のSecret アクセス
ConfigMap・Volume セキュリティ
- 機密情報の分離:ConfigMapとSecretの適切な使い分け
- Volume権限:ファイルシステム権限の適切な設定
- 暗号化Volume:永続ボリュームの暗号化
RBAC(Role-Based Access Control)
RBACの構成要素
- Subject:User、Group、ServiceAccount
- Role/ClusterRole:権限の定義
- RoleBinding/ClusterRoleBinding:SubjectとRoleの関連付け
権限設計のベストプラクティス
- 最小権限の原則:必要最小限の権限のみ付与
- Namespace分離:アプリケーション・環境別の分離
- ServiceAccount分離:用途別のServiceAccount使用
- 定期的権限監査:不要な権限の定期的な見直し
Admission Controllers
組み込みAdmission Controllers
- PodSecurity:Pod Security Standardsの適用
- ResourceQuota:リソース使用量制限
- LimitRanger:リソース範囲制限
- NetworkPolicy:ネットワークポリシー適用
カスタムAdmission Controllers
- Validating Webhooks:リソース検証
- Mutating Webhooks:リソース変更
- Policy Engines:Open Policy Agent(OPA)Gatekeeper
監視と監査
Audit Logging
- API Server Audit:API アクセスの詳細ログ
- 監査ポリシー:ログレベルとスコープの設定
- ログ分析:異常なアクティビティの検出
ランタイム監視
- Falco:Kubernetesランタイムセキュリティ監視
- 異常検知:予期しない動作の検出
- インシデント対応:自動的な対応アクション
セキュリティツールとソリューション
オープンソースツール
- kube-bench:CIS Kubernetesベンチマーク検証
- kube-hunter:クラスター脆弱性スキャン
- Polaris:設定ベストプラクティス検証
- OPA Gatekeeper:ポリシー制御
商用ソリューション
- Aqua Security:包括的Kubernetesセキュリティ
- Twistlock(Prisma Cloud):クラウドネイティブセキュリティ
- Sysdig Secure:ランタイム保護と監視
- StackRox(Red Hat Advanced Cluster Security)
セキュリティベストプラクティス
設計段階
- Defense in Depth:多層防御の実装
- Least Privilege:最小権限の原則
- Secure by Default:デフォルトでセキュアな設定
- Fail Securely:障害時のセキュアな挙動
運用段階
- 定期的なセキュリティ監査:設定とポリシーの見直し
- 脆弱性管理:継続的な脆弱性スキャンと対応
- インシデント対応計画:セキュリティ侵害時の対応手順
- セキュリティ教育:チームメンバーのセキュリティ意識向上
まとめ
Kubernetes Securityは、クラスター、ワークロード、ネットワーク、データの各層で包括的なセキュリティ対策を行う必要があります。適切なRBAC設定、Pod Security Standards、Network Policies、監視体制を組み合わせることで、セキュアなKubernetes環境を構築・運用できます。セキュリティは継続的なプロセスであり、新しい脅威や機能に対応するため定期的な見直しと改善が重要です。