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概要
API Gateway(APIゲートウェイ)とは、複数のAPIサービスへの統一されたエントリーポイントとして機能するサービスです。クライアントとバックエンドサービス間の仲介役として、認証、認可、レート制限、監視、プロトコル変換などの横断的機能を提供します。
主な機能
セキュリティ機能
- 認証・認可 - JWT、OAuth 2.0、API キーによるアクセス制御
- レート制限 - API使用量の制限とスロットリング
- IP ホワイトリスト/ブラックリスト - IPアドレスベースのアクセス制御
- SSL/TLS 終端 - 暗号化通信の処理
トラフィック管理
- ロードバランシング - 複数のバックエンドサービスへの負荷分散
- フェイルオーバー - サービス障害時の自動切り替え
- サーキットブレーカー - 障害の連鎖を防ぐ自動遮断機能
- リトライ機構 - 失敗したリクエストの自動再試行
データ変換
- プロトコル変換 - HTTP/HTTPS、WebSocket、gRPCなどの変換
- リクエスト/レスポンス変換 - データフォーマットの変換
- ヘッダー操作 - HTTPヘッダーの追加・削除・変更
監視・分析
- ログ記録 - 詳細なアクセスログの出力
- メトリクス収集 - パフォーマンス指標の監視
- 分析・ダッシュボード - API使用状況の可視化
- アラート機能 - 異常検知と通知
マイクロサービス環境での重要性
複雑性の軽減
マイクロサービスアーキテクチャでは、数十から数百のサービスが連携します。API Gatewayにより以下の課題を解決:
- クライアントが個別のサービス位置を知る必要がない
- 横断的関心事の一元管理
- サービス間通信の簡素化
運用効率の向上
- バージョン管理 - APIバージョンの一元管理
- デプロイメント戦略 - カナリアリリース、ブルーグリーンデプロイの支援
- 開発者体験 - 統一されたAPI仕様とドキュメント
主要なAPI Gatewayソリューション
クラウドネイティブ
- Amazon API Gateway - AWSのマネージドサービス
- Azure API Management - Microsoftのクラウドサービス
- Google Cloud Endpoints - GCPのAPI管理サービス
オープンソース
- Kong - 高性能なマイクロサービス API Gateway
- Envoy Proxy - Cloud Native Computing Foundation プロジェクト
- Zuul - Netflix開発のJavaベースゲートウェイ
- Ambassador - Kubernetes ネイティブなAPI Gateway
エンタープライズ
- Apigee - Google Cloudのエンタープライズソリューション
- MuleSoft Anypoint Platform - 統合プラットフォーム
- WSO2 API Manager - オープンソースベースのエンタープライズ製品
セキュリティ上の考慮事項
単一障害点リスク
API Gatewayは重要なインフラストラクチャコンポーネントのため、以下の対策が必要:
- 高可用性設計(冗長化)
- 適切な監視とアラート
- バックアップとディザスタリカバリー計画
セキュリティベストプラクティス
- 最小権限原則 - 必要最小限のアクセス権限
- 入力検証 - すべてのAPIリクエストの検証
- ログ監査 - セキュリティイベントの記録と分析
- 定期的な脆弱性評価 - セキュリティ監査の実施
実装時のベストプラクティス
設計原則
- ステートレス設計 - スケーラビリティの確保
- 非同期処理 - パフォーマンスの最適化
- graceful degradation - 部分的な障害時の継続稼働
運用管理
- APIファーストアプローチ - 設計段階からのAPI設計
- 継続的監視 - パフォーマンスとセキュリティの監視
- ドキュメンテーション - 包括的なAPI仕様書の維持
関連技術
- Microservices - マイクロサービスアーキテクチャ
- REST API - RESTful API設計
- Kubernetes - コンテナオーケストレーション
- OAuth - 認証・認可プロトコル