クラーク経済特区:元米軍基地が東南アジア最強の投資先に化けた話

2025年6月20日 | 海外ビジネス・投資

今一番人があつまるSMクラーク裏手の新ITパークエリア

今一番人があつまるSMクラーク裏手の新ITパークエリア

みなさん、フィリピンのクラーク経済特区って知ってますか?「ああ、マニラの北にある元米軍基地でしょ?」程度の認識だった人、実はこの場所が今めちゃくちゃアツいんです。

2024年第1四半期だけで投資額445億ペソ(約1,300億円)、前年比なんと3倍増。雇用創出は13万6千人、進出企業数は1,113社。これ、シンガポールや香港に匹敵する勢いなんですよ。

火山灰から立ち上がったシンデレラストーリー

1991年、ピナトゥボ山の大噴火でクラーク空軍基地は火山灰に埋もれました。まさに「終わった」状態。でも、そこからがフィリピンの真骨頂でした。

2013年ラスベガスで開かれたAWSイベントでプログラミングコンテストで優勝。この時の経験がその後の僕の人生を大きく変え、このメンバーの何人かといまもクラークとやり取りしている

2023年ラスベガスで開かれたAWSイベントでプログラミングコンテストで優勝。この時の経験がその後の僕の人生を大きく変え、このメンバーの何人かといまもクラークとやり取りしている

1993年、ラモス大統領が「ここを経済特区にする!」と宣言。当時は「火山灰まみれの土地で何ができるんだ」という声も多かったそうですが、結果的にこれが大正解。

今では総面積32,000ヘクタール(シンガポールの約半分)の巨大経済特区に成長しています。特に新クラーク市だけで計画人口120万人60万人の雇用創出を予定しているんです。

エンジニアが泣いて喜ぶインフラ環境

僕らエンジニアにとって重要なのは、やっぱりインフラですよね。クラークはこの点で本当にすごい。

ITパーク内のレンタルオフィス。フィリピンとは思えない清潔さ

ITパーク内のレンタルオフィス。フィリピンとは思えない清潔さ

まず通信環境。200キロメートルの光ファイバーバックボーンネットワークで、200カ国への接続が可能。しかも2018年からフィリピン初の5G都市として、2,000以上の5G基地局が稼働中。

PLDTのVITROデータセンターをはじめ、大型データセンターも完備。レイテンシーを気にする必要のないレベルです。

電力も安定してます。Clark Electricが専用配電で100 MVA、230kV-69kVの変圧器から供給。停電でサーバーダウンなんて心配はほぼありません。

立地が神すぎる件について

クラークの都市計画文書にあった未来予想図

クラークの都市計画文書にあった未来予想図

マニラから車で約2時間、2026年には鉄道で1時間以内になる予定。クラーク国際空港は年間1,200万人の収容能力で、台北、東京、バンコク、ドバイへの直行便あり。

でも本当にすごいのは災害リスクの低さ。海抜54メートル以上で洪水リスクが低く、東西の山脈が台風から守ってくれる。東南アジアでこんな立地、他にないですよ。

テック企業が続々進出中

テキサス・インスツルメンツ最大10億ドルの投資拡張を発表。フィリピン最大級の半導体製造拠点になります。

クラークメインストリート。マニラのBGCを彷彿とさせる

クラークメインストリート。マニラのBGCを彷彿とさせる

日本からは横浜タイヤ35億ペソで拡張投資。従業員3,901人の大拠点です。

IT・BPO分野ではTaskUsAloricaなどの大手が1,500席規模のオフィスを構えています。

韓国のサムスン電子機械ドンファン・クラーク(4億ドルのリゾート開発)も大型投資を実施中。

この記事をシェア

Facebook X (Twitter)

税制優遇が半端ない

CREATE MORE法(2024年施行)で投資環境がさらに強化されました:

  • 法人税率:25%→20%に引き下げ
  • 優遇期間:17年→27年に延長
  • 100%外国資本所有可能
  • 輸入関税免除、VAT(付加価値税)ゼロ評価
  • 所得税減免4-7年間

工業用地賃料も月額0.27-0.45ドル/平方メートルと、シンガポールの10分の1以下。

人材確保の心配も少ない

300mくらい旧ターミナルから移転した新クラーク空港。東京名古屋福岡から直行便があるが深夜ばかり

300mくらい旧ターミナルから移転した新クラーク空港。東京名古屋福岡から直行便があるが深夜ばかり

中央ルソン地域の失業率は5%(雇用率95%)。フィリピン人の英語能力は言うまでもなく、BPO産業での経験が豊富です。

労働コストも魅力的。最低賃金は435-550ペソ/日(約7.8-9.9米ドル)で、米国・豪州・英国比で30-60%のコスト削減効果があります。

人材育成体制も充実。2024年にはTESDAの技術職業教育訓練イノベーションセンターが設立され、ロボティクス、メカトロニクス、スマートヘルスケア分野のコースを提供開始。

今後の展望がヤバすぎる

クラークはマニラからバスで2時間の距離。鉄道も数年後には通される見込み

クラークはマニラからバスで2時間の距離。鉄道も数年後には通される見込み

ニュークラークシティ構想は30年計画で総投資額約20億ドルの巨大都市開発。国家政府行政センター、大学キャンパス、スポーツハブなどが段階的に整備されます。

北南通勤鉄道のクラーク延伸(2026年完成予定)で、マニラとの移動時間が1時間以内に。

日米比ルソン経済回廊構想では、スービック湾からクラーク、マニラ、バタンガスまでの連結強化により、再生可能エネルギーと半導体サプライチェーンが整備される予定。

AIエンジニアにとってのチャンス

個人的に注目しているのは、クラークのAI・データサイエンス分野でのポテンシャルです。

みんな大好きSMクラークショッピングセンター。ここで全部済みます。

みんな大好きSMクラークショッピングセンター。ここで全部済みます。

5G環境とデータセンター完備、優秀な英語対応人材、コスト競争力。これ、AIモデルの学習・推論基盤としても、AIサービスの開発拠点としても最適じゃないですか?

しかも東南アジア全体をカバーできる立地。日本のAI企業が海外展開を考えるなら、クラークは真っ先に検討すべき場所だと思います。

投資家目線での魅力

投資対象としてのクラークの魅力は:

  1. 成長性:投資額前年比3倍増のトレンド
  2. 安定性:政治リスク、災害リスクの相対的低さ
  3. 流動性:ASEAN統合、日本との密接な関係
  4. 収益性:コスト競争力と税制優遇

特に「中国+1戦略」の流れで、サプライチェーン多様化を進める企業からの需要は今後さらに高まるでしょう。

注意点も忘れずに

もちろん、リスクもあります:

  • 人材確保競争:高技能労働者の奪い合い激化
  • インフラ負荷:急成長による電力・交通インフラへの負荷
  • 地域内競争:ベトナム、タイなど他のASEAN諸国との投資誘致競争

でも、これらは「成長痛」レベルの課題。根本的な投資魅力を損なうものではありません。

まとめ:今がチャンス

フィリピンで法人格を取得したときの思い出写真。もうみんなオンラインに移行したのでペーパーカンパニーに。

フィリピンで法人格を取得したときの思い出写真。もうみんなオンラインに移行したのでペーパーカンパニーに。

クラーク経済特区は、間違いなく今東南アジアで最もホットな投資先の一つです。特に:

  • 製造業エンジニア:半導体、自動車部品の製造拠点として
  • ITエンジニア:ASEAN市場向けサービス開発拠点として
  • AIエンジニア:低コスト・高性能な開発・運用環境として
  • 投資家:成長性と安定性を兼ね備えた投資先として

興味を持った方は、まずは現地視察から始めることをおすすめします。クラーク国際空港から日本への直行便もありますし、マニラ経由でも簡単にアクセスできます。

クラーク国際空港もう一枚

クラーク国際空港もう一枚

僕も近いうちに現地を訪問する予定なので、もし一緒に行きたい方がいれば声をかけてください。現地の空気感を体験すれば、きっとクラークのポテンシャルを実感できるはずです。

※この記事の情報は2024年6月時点のものです。投資判断は自己責任でお願いします。

Shinichi Noguchi

この記事が役に立ったらシェアしてください

クラーク経済特区の投資機会を他の方にも教えてあげてください

Facebookでシェア X (Twitter)でシェア

カテゴリ

海外ビジネス・投資

公開日

2025年6月20日

関連記事

すべての記事を見る →

お気軽にご相談ください

記事に関するご質問や、AI・IT技術導入のご相談など、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ サービス一覧