
2025年6月19日
2025年6月20日 | 海外ビジネス・投資
今一番人があつまるSMクラーク裏手の新ITパークエリア
みなさん、フィリピンのクラーク経済特区って知ってますか?「ああ、マニラの北にある元米軍基地でしょ?」程度の認識だった人、実はこの場所が今めちゃくちゃアツいんです。
2024年第1四半期だけで投資額445億ペソ(約1,300億円)、前年比なんと3倍増。雇用創出は13万6千人、進出企業数は1,113社。これ、シンガポールや香港に匹敵する勢いなんですよ。
1991年、ピナトゥボ山の大噴火でクラーク空軍基地は火山灰に埋もれました。まさに「終わった」状態。でも、そこからがフィリピンの真骨頂でした。
2023年ラスベガスで開かれたAWSイベントでプログラミングコンテストで優勝。この時の経験がその後の僕の人生を大きく変え、このメンバーの何人かといまもクラークとやり取りしている
1993年、ラモス大統領が「ここを経済特区にする!」と宣言。当時は「火山灰まみれの土地で何ができるんだ」という声も多かったそうですが、結果的にこれが大正解。
今では総面積32,000ヘクタール(シンガポールの約半分)の巨大経済特区に成長しています。特に新クラーク市だけで計画人口120万人、60万人の雇用創出を予定しているんです。
僕らエンジニアにとって重要なのは、やっぱりインフラですよね。クラークはこの点で本当にすごい。
ITパーク内のレンタルオフィス。フィリピンとは思えない清潔さ
まず通信環境。200キロメートルの光ファイバーバックボーンネットワークで、200カ国への接続が可能。しかも2018年からフィリピン初の5G都市として、2,000以上の5G基地局が稼働中。
PLDTのVITROデータセンターをはじめ、大型データセンターも完備。レイテンシーを気にする必要のないレベルです。
電力も安定してます。Clark Electricが専用配電で100 MVA、230kV-69kVの変圧器から供給。停電でサーバーダウンなんて心配はほぼありません。
クラークの都市計画文書にあった未来予想図
マニラから車で約2時間、2026年には鉄道で1時間以内になる予定。クラーク国際空港は年間1,200万人の収容能力で、台北、東京、バンコク、ドバイへの直行便あり。
でも本当にすごいのは災害リスクの低さ。海抜54メートル以上で洪水リスクが低く、東西の山脈が台風から守ってくれる。東南アジアでこんな立地、他にないですよ。
テキサス・インスツルメンツが最大10億ドルの投資拡張を発表。フィリピン最大級の半導体製造拠点になります。
クラークメインストリート。マニラのBGCを彷彿とさせる
日本からは横浜タイヤが35億ペソで拡張投資。従業員3,901人の大拠点です。
IT・BPO分野ではTaskUs、Aloricaなどの大手が1,500席規模のオフィスを構えています。
韓国のサムスン電子機械、ドンファン・クラーク(4億ドルのリゾート開発)も大型投資を実施中。
CREATE MORE法(2024年施行)で投資環境がさらに強化されました:
工業用地賃料も月額0.27-0.45ドル/平方メートルと、シンガポールの10分の1以下。
300mくらい旧ターミナルから移転した新クラーク空港。東京名古屋福岡から直行便があるが深夜ばかり
中央ルソン地域の失業率は5%(雇用率95%)。フィリピン人の英語能力は言うまでもなく、BPO産業での経験が豊富です。
労働コストも魅力的。最低賃金は435-550ペソ/日(約7.8-9.9米ドル)で、米国・豪州・英国比で30-60%のコスト削減効果があります。
人材育成体制も充実。2024年にはTESDAの技術職業教育訓練イノベーションセンターが設立され、ロボティクス、メカトロニクス、スマートヘルスケア分野のコースを提供開始。
クラークはマニラからバスで2時間の距離。鉄道も数年後には通される見込み
ニュークラークシティ構想は30年計画で総投資額約20億ドルの巨大都市開発。国家政府行政センター、大学キャンパス、スポーツハブなどが段階的に整備されます。
北南通勤鉄道のクラーク延伸(2026年完成予定)で、マニラとの移動時間が1時間以内に。
日米比ルソン経済回廊構想では、スービック湾からクラーク、マニラ、バタンガスまでの連結強化により、再生可能エネルギーと半導体サプライチェーンが整備される予定。
個人的に注目しているのは、クラークのAI・データサイエンス分野でのポテンシャルです。
みんな大好きSMクラークショッピングセンター。ここで全部済みます。
5G環境とデータセンター完備、優秀な英語対応人材、コスト競争力。これ、AIモデルの学習・推論基盤としても、AIサービスの開発拠点としても最適じゃないですか?
しかも東南アジア全体をカバーできる立地。日本のAI企業が海外展開を考えるなら、クラークは真っ先に検討すべき場所だと思います。
投資対象としてのクラークの魅力は:
特に「中国+1戦略」の流れで、サプライチェーン多様化を進める企業からの需要は今後さらに高まるでしょう。
もちろん、リスクもあります:
でも、これらは「成長痛」レベルの課題。根本的な投資魅力を損なうものではありません。
フィリピンで法人格を取得したときの思い出写真。もうみんなオンラインに移行したのでペーパーカンパニーに。
クラーク経済特区は、間違いなく今東南アジアで最もホットな投資先の一つです。特に:
興味を持った方は、まずは現地視察から始めることをおすすめします。クラーク国際空港から日本への直行便もありますし、マニラ経由でも簡単にアクセスできます。
クラーク国際空港もう一枚
僕も近いうちに現地を訪問する予定なので、もし一緒に行きたい方がいれば声をかけてください。現地の空気感を体験すれば、きっとクラークのポテンシャルを実感できるはずです。
※この記事の情報は2024年6月時点のものです。投資判断は自己責任でお願いします。
Shinichi Noguchi
2025年6月20日